シンボルツリーが果たす役割
導入事例
以前ブログで導入事例として挙げた南青山のオフィスに続き、代表のご自邸もご依頼をいただきました。通常は、お打ち合わせに際して、お客様の心の声と家の空間と環境を紐づけてデザインをしていきますが、今回は、少しのご要望だけで、ご予算も関係なくすべてお任せします!と言われました。理由をお尋ねすると、「南青山のオフィスでの植栽の空間バランスとセンスを実感したので」とひとこと。とてもありがたいお言葉でした。主人公はお客様で、弊社は導き手のスタンスを心にとめながら、楽しいお仕事ができました!
【お客様のご要望】
・玄関横にシンボルツリーが欲しい
・ネコがいるので手を出しても大丈夫なもの
・水を多くあげてしまうので、管理ができる限り優しいもの
室内の植栽は、工事段階で現調しながら、お客様に吹抜けに流れるようなシンボルツリーをご提案。シンボルツリーというと、広いスペースにドッカーンと置くイメージがありますが、コンパクトスペースでも十分可能になります。吹抜けというデッドスペースは採光・通気・スペースという条件が揃っていますので、考え方次第では最適な場所のひとつになります。
置く場所のスペースをあまり取らないようにするために、①器は細長いタイプにすること、②植物の鉢の耳を切って直径寸法を小さくすること、③植物自体を底上げして高さを確保すること、③鉢の上に化粧石を敷くこと、このようなことで狭いスペースでも置くことが可能になり、ネコちゃんがちょっかいをあまり出せないような収まりにしました。
3Fは子供たち、2Fはご夫婦、1Fは家族が集う場所になっているので、どこにいてもシンボルツリーが見られ、植物を介して家族がひとつに感じられる空気感ができたと思います。植物は、癒される、格好いいとかもありますが、暮らしのフィルターを通した時の植物の果たす役割は大切です。住まい手が快適で安全に暮らす上で、動線の確保や注意喚起する役目を植物が果たしてくれるのです。「植物が家族になる」そんな暮らしを。
2F吹抜け
1Fからの吹抜けの眺め
3Fからの吹抜けの眺め
室外の植栽は、管理が比較的優しい樹種を選定しています。3Fルーフバルコニーは、当初は予定してなかったのですが、外構植栽ができて下から見上げた時に3Fもあるといいなぁと追加になりました。植物の特性や水やりの観点から似たモノ同士でプランツアレンジメントにしました。
室外で気をつけた点は、夏場の建物からの輻射熱です。建物が南面に面しているので日当たりがよく、植栽スペースは建物に密着しがちなので、樹高を抑えて耐暑性があるオージープランツを選定して、余白を作ることで通気性を確保しています。動きのある樹形にすることでスペースを消せて、植物が少なくても植物があるように見せることができます。
シンボルツリーは株立ちのシマトネリコで、足元にはカレックスを配置。シマトネリコは間引きという葉が密にならないように剪定することで、通気性を確保しながら和モダン調にしています。
化粧石は岐阜石を使うことで、建物に使用しているレッドシダー(天然木)と調和させています。水に濡れた岐阜石はオレンジっぽいレッドシダーと似た感じになり、空間のアクセントになります。そして、レッドシダーは経年変化でグレイっぽく味わいがでてきて、岐阜石の経年変化とともに時の流れを感じることが楽しみになることでしょう。
わたしたちは、植物そのものだけを提供するのではなく、デザイン性、植物の特性、人への効果性、安全性などを紐付けて住まいの空間に落とし込み、植物を通して快適で安全に暮らすことができるようにすることが、植物空間デザインの本質だと捉えています。
また、植物の空間デザインだけでなく、植物を育てられる人にすることまでが、わたしたちのお仕事になります。健康な植物を、環境に適した配置をして、適切な育て方をすることで、植物たちは家族のような存在になります。そのケアまでしっかりとお付き合いさせていただくことが、わたしたちの最大の強みであります。